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No.87新着 喜劇新思想大系(マンガストーリー・1972年) シリアスな作者が一転して描いた、写実的な絵のギャグ

『喜劇新思想大系』は、山上たつひこが1972年に双葉社の雑誌『マンガストーリー』で連載を始めたギャグ漫画である。シリアスな作品で知られた作者が、写実的な画風のままギャグの作風を確立した転換点とされ、2年後の『がきデカ』に引き継がれた。雑誌の歩みと、2004年の完全版までの単行本の流れを資料で整理する。

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登録日時
2026年11月1日 09:08
出典を確かめた日
2026年11月1日
分野
名作を読む
立場
事実・データ
タグ
4コマ・ギャグ新着漫画家新着漫画雑誌新着
作品・人物
喜劇新思想大系、山上たつひこ、双葉社、マンガストーリー、がきデカ、光る風
資料の種類
事典・概説
年代
1972年、1970年代

本文と出典

あらまし

『喜劇新思想大系』は、山上たつひこが1972年に『マンガストーリー』で連載を始めたギャグ漫画である。マンガペディアは、この作品で山上が独自のギャグの作風を確立し、その手法が1974年連載の『がきデカ』に受け継がれたと記す。新潮社の著者紹介も、1972年の同作で「写実的な画風のギャグ」を確立したと書く。
内容は、逆向春助という金も定職もない青年と、その周りの変わった仲間たちの日常を描く連作である。マンガペディアはこれを「エロ・グロを追求したスラップスティック」と紹介している。性や暴力を笑いにする作品なので、この記事では細かい場面には立ち入らず、台詞も絵も引かない。
『光る風』などシリアスな作品で注目された作者が、なぜこの方向に進んだのか。作者本人の言葉で確かめられた資料は、今回見つからなかった。確かめられたのは、作品の位置づけと、掲載された雑誌、単行本の流れである。

主なできごと

・1970年 山上たつひこが『週刊少年マガジン』で『光る風』を連載する(マンガペディア)
・1972年 『マンガストーリー』で『喜劇新思想大系』の連載が始まる(マンガペディア、新潮社の著者紹介)
・1974年 『週刊少年チャンピオン』で『がきデカ』の連載が始まる。同じ年の7月で、国立国会図書館の書誌では『マンガストーリー』の所蔵が終わり、8月から後継誌『パワァコミック』が出る
・1992年 双葉社から『山上たつひこ選集』全3巻として刊行される(マンガペディア)
・1997年 講談社+α文庫から刊行される。マンガペディアの一覧には1巻と3巻が載る
・2004年 フリースタイルから『喜劇新思想大系 完全版』上下巻が出る(マンガペディア)
・2009年 同じ完全版の新装版が出る(マンガペディア)

くわしく 掲載誌『マンガストーリー』

国立国会図書館の書誌によると、『マンガストーリー』は双葉社の月2回刊の漫画雑誌で、刊行期間は1962年から1974年である。前の誌名は『別冊週刊大衆漫画Story』で、号によって『漫画ストーリー』とも表記される。1974年8月からは同じ双葉社の『パワァコミック』に変わり、こちらは1978年7月までで休刊した。
つまり『喜劇新思想大系』は、双葉社の月2回刊の漫画雑誌で始まった連載である。雑誌の読者層や誌面の傾向について、今回の資料に記述はなかったので、ここでは立ち入らない。ジージは1954年生まれで、1972年は18歳だった。

くわしく 単行本の流れ

単行本は何度も形を変えて出ている。1992年に双葉社の『山上たつひこ選集』として3冊、1997年に講談社+α文庫、2004年にフリースタイルの『完全版』上下巻である。2009年には、この完全版の新装版が出た。
フリースタイルの新装版の紹介ページによると、完全版は、過去の版で収録作品が少なかったことや、ネームが改変されていたことを踏まえ、未収録のページやカラーページを含めて再現し、削除や修正のあった表現も著者の監修で復元したものである。上巻は698ページとされる。長く品切れだったとも書かれている。
なお、書名の表記は資料で揺れる。新潮社とマンガペディアの本文は「大系」で、コトバンクの百科事典マイペディアは「体系」と書く。この記事は、出版物の表記に合わせて「大系」とした。

なぜ今も語られるのか

確かめられる理由は、作品の位置にある。マンガペディアは、この作品を山上にとってシリアスな作品からの転換点と位置づける。その延長に、1970年代のギャグ漫画を代表する『がきデカ』がある。
また、作者が絵の描き方を変えないまま笑いの質を変えた点も、新潮社の「写実的な画風のギャグ」という説明から読み取れる。絵柄のかわいらしさに頼らないギャグという形は、のちの作品を考えるときの手がかりになる。

評価の分かれる点

この作品が、当時どう受け止められ、どんな批判があったのかは、今回開いた資料では確かめられなかった。マンガペディアは「好評を得た」と書くが、それは雑誌の評判か、後年の評価か、資料からは分からない。
内容が性と暴力を前面に出す以上、読む人によって評価が大きく分かれることは容易に想像できる。ただし、それは推測であり、事実としては書かない。

くらさんの考察

今回の資料から言えることは限られている。1970年にシリアスな長編を描いた作者が、1972年にギャグへ移り、1974年に別の雑誌で『がきデカ』を始めた、という順序は確かである。この順序を見ると、『喜劇新思想大系』は『がきデカ』より前に、写実的な絵のギャグを試す場になっていたと考えられる。
また、2004年の完全版が、削除や修正された表現の復元をうたっていることは、初出から時間がたつ中で、作品の表現に手が入った版があったことを示している。何がどこで変わったかは、今回確かめていない。復刊の経緯を知るには、各版を見比べる必要がある。
作者が転身した理由は、資料からは分からない。分からないことは、分からないままにしておく。

ジージへの問いかけ

・ジージが18歳だった1972年ごろ、大人向けの漫画雑誌は身近にありましたか。どこで読んでいましたか。
・『光る風』を知っていた人は、同じ作者のギャグ漫画をどう受け止めたと思いますか。ジージの周りの反応を覚えていますか。
・『がきデカ』より前にこの作品が出ていたことを、当時どこまで知られていたと思いますか。

出典

・マンガペディア「喜劇新思想大系」 https://mangapedia.com/%E5%96%9C%E5%8A%87%E6%96%B0%E6%80%9D%E6%83%B3%E5%A4%A7%E7%B3%BB-c7gvhx635
・マンガペディア「山上たつひこ」 https://mangapedia.com/%E5%B1%B1%E4%B8%8A%E3%81%9F%E3%81%A4%E3%81%B2%E3%81%93-3n7wc4bbx
・新潮社「山上たつひこ」著者紹介 https://www.shinchosha.co.jp/writer/7030/
・コトバンク「山上たつひこ」 https://kotobank.jp/word/山上たつひこ
・国立国会図書館サーチ「マンガストーリー」 https://ndlsearch.ndl.go.jp/en/books/R100000002-I000000022479
・国立国会図書館サーチ「パワァコミック」 https://ndlsearch.ndl.go.jp/en/books/R100000002-I000000026230
・復刊ドットコム「喜劇新思想大系 完全版 上」 https://www.fukkan.com/fk/CartSearchDetail?i_no=68312250

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