No.73新着 雑誌から単行本へ、そして電子書籍へ 漫画が読者に届く道筋の変化
漫画は雑誌に連載され、人気作が単行本になる流れで長く届けられてきた。出版科学研究所によると、2025年のコミック市場は6925億円で、電子が76.1%を占め、紙のコミック誌は392億円にまで減った。連載の場は電子のサービスへ移りつつあるが、数字の条件を確かめて読む必要がある。
本文と出典
あらまし
漫画が読者に届く道筋は、雑誌に連載し、人気作を単行本にして売る流れが長く中心だった。この流れが、電子書籍の広がりで変わってきた。全国出版協会の出版科学研究所は、紙と電子を合わせた2025年のコミック市場が6925億円で、前年比1.7%減だったと発表している。紙は1652億円、電子コミックは5273億円で、電子の占める割合は76.1%である。
主なできごと
・1967年 『りぼんコミックス』創刊(集英社の年表では12月)
・1968年 『マーガレットコミックス』発刊(集英社の年表では1月)。同年に小学館が『ビッグコミック』『少女コミック』を創刊
・1969年 『ジャンプコミックス』発刊(11月)
・1995年 紙のコミック市場がピーク(5864億円)
・2013年 集英社『ジャンプBOOKストア!』(1月)、『マーガレットBOOKストア!』(6月)の配信開始
・2014年 出版科学研究所が電子出版の統計を開始。9月に『少年ジャンプ+』のアプリ配信開始
・2020年 紙のピークを、紙と電子を合わせたコミック市場が上回る
・2024年 『ジャンプTOON』(5月)配信開始。『少年ジャンプ+』は創刊10周年
・2025年 コミック市場は6925億円で前年比1.7%減。出版科学研究所は「7年連続のプラスから一転」と発表し、報道には2017年以来8年ぶりのマイナスとするものもある
雑誌の連載から単行本へ
集英社の年表は、1968年1月の「マーガレットコミックス」を、本格的なコミック単行本の先鞭をつけたものとして記す。1969年11月には、人気連載の『男一匹ガキ大将』や『ハレンチ学園』を単行本にした「ジャンプコミックス」を発刊した。1967年12月の「りぼんコミックス」も、年表に載る。小学館は1968年に『ビッグコミック』と『少女コミック』を創刊しており、漫画誌と単行本が1960年代後半に並んで広がったことが分かる。
日本経済新聞は、週刊漫画雑誌の連載で読者を獲得し、単行本につなげるビジネスモデルが出版社の生命線だったと述べる。雑誌は連載の場であると同時に、単行本の宣伝の場でもあった。
紙の市場の変化
出版科学研究所のコミック販売額の解説は、紙のコミック市場のピークを1995年の5864億円とする。同研究所の2025年の発表では、1995年の内訳は、コミックス(単行本)が2507億円、コミック誌が3357億円である。コミック誌は1996年以降、前年割れが続いている。
2025年の紙のコミック市場は1652億円で、コミックスが1260億円、コミック誌が392億円だった。紙の数字は取次ルートが対象で、出版社と書店の直接取引や出版社の直接販売は含まれない。コンビニ向けの雑誌配送も見直しが進み、2025年に日販がローソンとファミリーマート向けの配送から撤退したと日本経済新聞は報じている。
電子コミックの伸び
出版科学研究所は、電子出版の統計を2014年から取り始めた。2017年には電子コミックが1747億円で、2025年には5273億円になった。コミック市場全体は、2018年以降増加を続け、2020年に紙のピークを上回って以降、過去最大の更新が続いたが、2025年は前年から1.7%減った。同研究所は、電子の伸びが鈍り、紙の落ち込みを補い切れなくなったと説明している。
連載の場も電子へ移っている。同研究所は、マンガアプリ発のヒット作が目立ち、連載媒体としての役割がデジタルへ移りつつあると解説している。集英社の年表によれば、『少年ジャンプ+』は2014年9月に配信が始まり、2018年に1000万ダウンロードを超え、2024年に創刊10周年、月間ユーザー数1200万人以上となった。
雑誌の部数の現在
日本雑誌協会が公表する2026年4月から6月の印刷証明付き部数は、『週刊少年ジャンプ』が98万5000部、『週刊少年マガジン』が28万1000部、『週刊少年サンデー』が12万部である。日本経済新聞は、ジャンプの部数が2008年の公表開始以来、初めて100万部を割ったと伝える。これらは紙の雑誌の部数で、電子で読む読者は入っていない。
数字の読み方
出版科学研究所の「コミック」は、コミックス、コミック誌、電子コミックの合計である。紙は取次ルートの推定販売金額、電子は読者が支払った金額の推計で、定額の読み放題を含む。1995年の5864億円と2025年の6925億円は、電子が入るかどうかで中身が違うため、単純な増減としては読めない。紙だけを比べると、5864億円から1652億円へ下がっている。
評価の分かれる点
「紙が減って電子が増えた」という説明は、おおむね数字に合うが、雑誌の部数や市場の金額が「漫画の人気」の増減を表すかどうかは別の問題である。日本経済新聞は、映像化や商品化、海外のライセンスが収益源として重要になっていると述べ、漫画作品の存在感は高まっているとする。雑誌の部数の減少を、漫画そのものの衰えと読むかどうかは、見方が分かれる。
くらさんの考察
単行本の発刊が1960年代後半に相次いだことと、電子の連載媒体が2010年代に広がったことは、どちらも読者に届く経路の変化である。出版社は、雑誌で連載を試し、売れたら単行本にする方式から、アプリで連載を試し、売れたら紙と電子の両方で単行本を出す方式へ重心を移してきたと考えられる。ただし、出版社ごとの採算の中身は、公表された資料では確かめられない。
ジージへの問いかけ
子どものころ、漫画は雑誌と貸本のどちらで読むことが多かったでしょうか。
単行本を初めて買った漫画は何でしたか。
いまは電子で漫画を読む人が増えていますが、紙の雑誌の手触りや、毎週の楽しみは、電子で代わりになると思いますか。
出典
・出版科学研究所 コミック販売額 https://shuppankagaku.com/statistics/comic/
・出版科学研究所 ニュースリリース 2025年コミック市場(2026年2月25日) https://shuppankagaku.com/wp/wp-content/uploads/2026/02/%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%AA%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B92602.pdf
・出版科学研究所 電子出版販売額 https://shuppankagaku.com/statistics/ebook/
・HON.jp 2025年コミック市場は6925億円 前年比1.7%減(出版科学研究所調べ) https://hon.jp/news/1.0/0/58504
・集英社小史(集英社公式・年表) https://www.shueisha.co.jp/history/
・小学館 沿革・歴史 https://www.shogakukan.co.jp/company/history
・日本雑誌協会 印刷証明付部数(ジャンプ、マガジン、サンデー) https://www.j-magazine.or.jp/user/printed2/mag/252
・日本経済新聞「週刊少年ジャンプ」、紙部数が初の100万部割れ https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC060GU0W6A800C2000000/
動画
菊池健氏電子コミックの歴史と、MANGA総研「マンガIP市場調査レポート」から見るマンガ産業の現在地(日本電子出版協会)https://www.youtube.com/watch?v=ewZHVM1dBHA
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