No.207新着 アングレーム国際漫画祭 1974年に始まったフランスの漫画祭と、日本の漫画家たち
アングレーム国際漫画祭は1974年に始まったフランスの漫画祭で、作家に贈るグランプリと、アルバムに贈るファヴ・ドール(Fauve d'or)を柱にする。水木しげる(2007年)、大友克洋(2015年)、高橋留美子(2019年)らの受賞を報道で確かめた。2026年の回は中止され、2027年は新しい主催者で1月27日から開かれる予定である。
本文と出典
あらまし
アングレーム国際漫画祭は、フランス中西部の都市アングレームで毎年1月ごろに開かれる漫画の祭典である。
フランス語の正式名は Festival international de la bande dessinée d'Angoulême で、略して FIBD と呼ばれる。
バンド・デシネ(フランス語圏の漫画)を軸にしながら、日本のマンガや米国のコミックも作家・作品として受賞や展示の対象になってきた。
日本の漫画家が受賞すると日本の報道が大きく扱うため、日本でも名前が知られている。
主なできごと
・1974年 第1回が1月25日から27日に開かれる(フランス語版ウィキペディアによる)
・1996年 名称が「Salon international」から「Festival international」に変わる(同)
・2007年 水木しげる『のんのんばあとオレ』が公式セレクションの最優秀コミック賞(ベストコミックブック賞とも訳される)を受ける
・2015年 大友克洋(『AKIRA』の作者)がグランプリに選ばれる
・2018年 楳図かずお『わたしは真悟』が遺産賞を受ける
・2019年 高橋留美子がグランプリに選ばれる
・2026年 1月の回が中止される
・2027年 1月27日から31日の開催が予定される
始まりと運営
フランス語版・英語版のウィキペディアによると、祭りは1974年にフランシス・グルー、ジャン・マルディキアン、クロード・モリテルニらが始めた。
運営の主体は時代で変わった。
フランス語版は、2008年以降は民間企業の 9eArt+ が運営していると書く。
2026年10月のAFP通信(RTBFが配信を掲載)は、同社が2007年から運営してきたと伝える。
開始年が1年食い違うため、ここでは「2000年代後半から」としか言えない。
運営をめぐっては、作家の側から運営のやり方への批判が続いていた。
2025年12月に2026年の回の中止が確定し、1月末には市内各所で別の催し「Grand Off」が開かれた(フランス語版ウィキペディアによる)。
その後、公的機関と業界団体でつくる ADBDA が新しい主催者を公募し、4月にモルガーヌ・グループ(Morgane Groupe)を選んだ。
同グループはラ・ロシェルのフランコフォリー、ブールジュのプランタン・ド・ブールジュも手がける。
新しい催しのために「M : BD」という組織が作られ、会期は2027年1月27日から31日の予定である。
9eArt+ は選定を不服として裁判で争ったが、2026年10月14日に裁判所が訴えを退けたと報じられた(RTS、RTBF)。
最新の確認日は2026-11-02であり、2027年の中身は11月3日の記者会見で発表される予定とされる。この時点では確かめられない。
賞の仕組み
中心になる賞は二つある。
グランプリ(Grand Prix de la ville d'Angoulême)は、存命の作家に、作品全体への評価として贈る。
受賞者は翌年の祭りの会長を務め、ポスターを描き、展覧会が開かれる。英語版ウィキペディアにそう書かれている。
2015年の大友克洋については、約3,500人の漫画家の投票で3人に絞り、約1,600人の決選投票で約38パーセントを得たと報じられている(琉球新報)。
もう一つのファヴ・ドール(Fauve d'or)は、前年に刊行された最優秀アルバムに贈る賞である。
このほか、公式セレクションの各賞、遺産賞、特別賞などがある。2018年の回では、主要9賞の対象は前の1年にフランス語で刊行された作品だと報じられている(ITmedia)。
日本の漫画家との関わり
水木しげるの受賞は2007年1月27日、第34回の回のことである。
アニメ!アニメ!の報道によれば、公式セレクションの44作品のうち日本のマンガは8作品あり、日本人が最優秀コミック賞を受けたのはこれが初めてだった。
大友克洋のグランプリは2015年1月である。2019年のAFP通信は、高橋留美子を、女性として、また日本人として2人目のグランプリ受賞者と伝え、日本人の前回の受賞は2015年の大友克洋だったと書く。琉球新報は、大友の受賞を同祭の最優秀賞で日本人初と書く。
高橋は授賞式を欠席したと報じられた。
2018年の回では、楳図かずおの『わたしは真悟』が遺産賞を受けた。
同じ回で浦沢直樹が特別賞、真島ヒロが特別栄誉賞を受けたと報じられている。手塚治虫展が地元の博物館で開かれたことも伝わる。
これ以外の日本人の受賞は、確かめられた範囲では記していない。
なぜ日本の漫画家が注目されるのか
AFP通信の2019年の記事によると、フランスは日本国外で最大の漫画市場であり、2018年の販売は1,600万部で前年から11パーセント増えた。
市場の大きさは、フランスの読者が日本のマンガを日常的に読んでいることを示す。
ただし、この数字だけでは、受賞が売れ行きを押し上げたのか、売れていたから評価が進んだのかは分からない。
評価の分かれる点
「日本人初」という言い方は、賞によって変わる。
水木しげるは最優秀コミック賞で日本人初、大友克洋はグランプリで日本人初と報じられた。賞の種類を分けて読む必要がある。
運営をめぐる出来事も、報道の範囲でしか書けない。作家の側の批判と、運営会社の言い分は別々に読むべきである。
くらさんの考察
日本の側から見ると、受賞は日本の漫画が作家の作品として評価される場面だと考えられる。
一方で、運営の混乱が示すとおり、祭りは「誰が作家の声を代表するか」をめぐって動いてきた。作家の投票でグランプリを決める仕組みが、ボイコットを起こす力になったと考えられる。
2027年に新体制で何を引き継ぎ、何を変えるのかは、まだ資料がない。
ジージへの問いかけ
・賞の「日本人初」が、水木さんと大友さんで別の賞だったことを、どう受け止めますか。
・日本の漫画の賞は出版社や新聞社が決めることが多いですが、作家どうしの投票で決まる賞をどう思いますか。
・フランスで日本のマンガが多く読まれている話を、子どものころの貸本や少年雑誌と比べて、どう感じますか。
出典
・フランス語版ウィキペディア「Festival international de la bande dessinée d'Angoulême」 https://fr.wikipedia.org/wiki/Festival_international_de_la_bande_dessinée_d'Angoulême
・英語版ウィキペディア「Angoulême International Comics Festival」 https://en.wikipedia.org/wiki/Angoul%C3%AAme_International_Comics_Festival
・アニメ!アニメ!「水木しげる『のんのんばあとオレ』アングレーム受賞」(2007-01-29) https://animeanime.jp/article/2007/01/29/1451.html
・AFPBB「水木しげる氏、仏アングレーム漫画祭で最優秀コミック賞」 https://www.afpbb.com/articles/amp/2173529
・琉球新報「大友克洋さんが最優秀賞」 https://ryukyushimpo.jp/news/prentry-238129.html
・AFPBB「高橋留美子氏にグランプリ」(2019-01-25) https://www.afpbb.com/articles/-/3208046
・ITmedia「第45回アングレーム国際漫画祭」 https://nlab.itmedia.co.jp/cont/articles/3275487/amp/
・RTS「Festival BD d'Angoulême : une nouvelle formule dès janvier 2027」 https://www.rts.ch/info/culture/livres/2026/article/festival-bd-d-angouleme-une-nouvelle-formule-des-2027-29387758.html
・RTBF(AFP配信、2026-10-19)「Après son annulation en 2026, le Festival international de la BD sera de retour en janvier 2027 à Angoulême」 https://www.rtbf.be/article/apres-son-annulation-en-2026-le-festival-international-de-la-bd-sera-de-retour-en-janvier-2027-a-angouleme-11802483
動画
・漫画家 高橋留美子 インタビュー~アングレーム国際漫画祭最優秀賞記念~(週刊少年サンデーTV)https://www.youtube.com/watch?v=Nk35KMHPfws
関連動画
この記事を読んで浮かんだ疑問は、運営者ジージが漫画QAでくらさんに質問し、答えをそこに載せていきます。