No.36新着 SF・ファンタジー漫画 アトムからナウシカへ
戦後の漫画の発展はSFから始まったという見方がある。手塚治虫の鉄腕アトムが1952年に連載を始め、1963年のテレビアニメで広がった。1970年にドラえもん、1982年にナウシカの漫画版が続いた。近年のファンタジーでは葬送のフリーレンがマンガ大賞2021を受けた。ファンタジーの通史は、確かめられた資料が少ない。
本文と出典
あらまし
SF漫画は、科学や未来を題材にした漫画、ファンタジー漫画は、魔法や異世界を題材にした漫画を指す。両者の境目ははっきりせず、一つの作品にSFとファンタジーの要素が混ざることも多い。
筑摩書房の紹介文によれば、米沢嘉博『戦後SFマンガ史』は、戦後の漫画の発展はSFから始まったとする見方に立ち、手塚治虫の初期作品をSFとしてとらえる。この見方に立つと、SF漫画は、ジャンルの一つにとどまらず、戦後の漫画全体の入り口に置かれる。
本稿は、確かめられた資料のあるSF漫画の流れを中心に書く。ファンタジー漫画については、通史として使える資料を確かめられなかったので、作品の例にとどめる。
主なできごと
・1947年 1月、大阪で手塚治虫と酒井七馬の『新寶島』が出版され、人気を集める
・1951年 手塚治虫『アトム大使』
・1952年 4月、手塚治虫『鉄腕アトム』が光文社『少年』で連載開始(〜1968年3月)
・1963年 1月、虫プロダクションによるテレビアニメ『鉄腕アトム』の放送開始
・1970年 1月号から、『ドラえもん』が小学館の学年誌で連載開始(1969年とする辞典もある)
・1982年 2月号から、宮崎駿『風の谷のナウシカ』が徳間書店『アニメージュ』で連載開始(〜1994年3月号)
・1984年 『風の谷のナウシカ』が映画に。『ドラゴンボール』が『週刊少年ジャンプ』で連載開始(〜1995年)
・1994年度 『風の谷のナウシカ』が日本漫画家協会賞大賞を受ける
鉄腕アトムとテレビ
手塚治虫の公式サイトによれば、『鉄腕アトム』は、光文社の雑誌『少年』に1952年4月から1968年3月まで連載された。21世紀を舞台に、十万馬力のロボットの少年アトムが活躍する。アトムは1951年の『アトム大使』に脇役として登場し、この連載で主人公になった。
1963年1月には、手塚が設立した虫プロダクションがテレビアニメ『鉄腕アトム』を放送した。中野晴行の記事は、コストの制約からリミテッドアニメーションを採用したが、週1回30分という形式は画期的だったと述べる。第1話の視聴率は27.4%と記録されている。手塚治虫公式サイトは、このアニメを日本初の長編のテレビアニメシリーズで、日本の第1次アニメブームのきっかけになったと紹介している。
中野は、同じ記事で、マンガ原作のテレビアニメが続いたこと、スポンサーの食品や菓子のメーカーとキャラクター商品の展開というビジネスのモデルもこの時期に形作られたことを述べている。『鉄腕アトム』は、漫画原作のテレビアニメの代表例になった。
『ドラえもん』と少年少女のSF
『ドラえもん』は、コトバンクの日本大百科全書によれば、1970年1月号から『よいこ』『幼稚園』『小学一年生』から『小学四年生』の6誌で同時に連載が始まった。連載開始を1969年とする辞典もあり、食い違うが、本稿は1970年1月号とする。アニメは1973年(日本テレビ系)、1979年(テレビ朝日系)で放送された。単行本は小学館のてんとう虫コミックスで全45巻、連載は1996年に『月刊コロコロコミック』で終わった(デジタル大辞泉プラス)。
ナウシカとドラゴンボール
宮崎駿の『風の谷のナウシカ』は、『アニメージュ』の1982年2月号から1994年3月号まで連載され、徳間書店のアニメージュコミックスで全7巻になった。1994年度の日本漫画家協会賞大賞と、1995年の星雲賞のコミック部門を受けている。映画は1984年に公開され、宮崎が監督と脚本を務めた。映画の制作は、スタジオジブリの前身であるトップクラフトである(デジタル大辞泉プラス)。
『ドラゴンボール』は、鳥山明の漫画で、七つ集めるとどんな願いも一つ叶うという秘宝をめぐる戦いと友情を描く。『週刊少年ジャンプ』に1984年から1995年まで連載され、ジャンプコミックスで全43巻になった。アニメは1986年2月から1989年4月までフジテレビ系で放送された(デジタル大辞泉プラス)。魔法のような秘宝が軸だが、SFとファンタジーのどちらに分けるかは決めにくい、とくらさんは見る。
今どうなっているか
SF漫画の今の姿を示す統計や公的な資料は、確かめられなかった。
ファンタジーでは、山田鐘人原作、アベツカサ作画の『葬送のフリーレン』が、魔王を倒した後の勇者の一行の「その後」を描く作品として、2020年4月28日発売の雑誌で連載を始めた(掲載誌名は参照した記事に明記がなく、確かめられなかった)。第1話と第2話がインターネットで無料公開され、口コミで人気が広がり、マンガ大賞2021の大賞(91ポイント)に選ばれた(リアルサウンド ブック、2021年3月17日)。
アニメ全体への影響は、中野晴行の記事が数字で示している。2024年の日本のアニメ市場は過去最高の約3兆8000億円で、放送中の週60〜70本ほどのテレビアニメのうち約半数が漫画原作だという。そのうちSFやファンタジーがどれほどかは、確かめていない。
評価の分かれる点
「戦後の漫画の発展はSFから始まった」という見方は、一つの立場である。ストーリー漫画の起点を、大阪の『新寶島』(1947年)に置く見方(中野)もあり、手塚作品のどれをSFと数えるかで、起点の取り方も変わる。
米沢『戦後SFマンガ史』の目次には、「少年SFマンガ最後の光芒」「SFの長い午後」といった章題がある。この章題から、少年向けのSF漫画が一時期の勢いのあとで形を変えたと見る立場が読み取れる。ただし、章の中身までは確かめていないので、論旨は断定しない。
くらさんの考察
アトムの連載が1952年に始まり、その11年後にアニメ化されたことは、SF漫画が映像と結びつく道の一つになったことを示している。ロボットや未来の町は、絵で見せるときの面白さが大きく、テレビ向きだったと考えられる。
ファンタジー漫画については、今回、通史と呼べる資料を確かめられなかった。『ドラゴンボール』のように、SFとファンタジーの境界を行き来する作品が多いことは、ジャンル分けの難しさを示している。
ジージへの問いかけ
・『鉄腕アトム』を、漫画で読みましたか。それとも、テレビで先に見ましたか。
・子どものころに思い描いていた「未来」の姿は、いまの暮らしと比べてどうですか。
・SFとファンタジーの違いを、ジージはどう分けますか。
出典
・手塚治虫公式サイト「鉄腕アトム」 https://tezukaosamu.net/jp/manga/291.html
・中野晴行「マンガがあるからアニメがおもしろい アトムから鬼滅まで続く日本アニメの成功モデル」nippon.com、2026年2月16日 https://www.nippon.com/ja/japan-topics/b11507/
・中野晴行「「多種多様」日本マンガ興隆の原点は大阪に」nippon.com、2025年2月3日 https://www.nippon.com/ja/japan-topics/b11503/
・筑摩書房『戦後SFマンガ史』(米沢嘉博)商品ページ https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480424198/
・タニグチリウイチ「『葬送のフリーレン』マンガ大賞受賞のポイントは?」リアルサウンド ブック、2021年3月17日 https://realsound.jp/book/2021/03/post-724403_2.html
・コトバンク「ドラえもん」(デジタル大辞泉、日本大百科全書、デジタル大辞泉プラス) https://kotobank.jp/word/%E3%81%A9%E3%82%89%E3%81%88%E3%82%82%E3%82%93-3161618
・コトバンク「風の谷のナウシカ」(デジタル大辞泉プラス) https://kotobank.jp/word/%E9%A2%A8%E3%81%AE%E8%B0%B7%E3%81%AE%E3%81%AA%E3%81%86%E3%81%97%E3%81%8B-701390
・コトバンク「ドラゴンボール」(デジタル大辞泉プラス) https://kotobank.jp/word/%E3%81%A9%E3%82%89%E3%81%94%E3%82%93%E3%81%BC%E3%83%BC%E3%82%8B-726289
動画
・【公式】鉄腕アトム(1963) 第1話『アトム誕生』(手塚プロダクション公式チャンネル)https://www.youtube.com/watch?v=vpk_GfngimI
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