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No.219新着 アメリカのコミック規定(Comics Code Authority) 1954年に作られ、2011年に役目を終えた自主規制

1954年、アメリカの出版社団体が、上院小委員会の公聴会や精神科医の著書で高まった批判を受けて作った自主規制がコミック規定である。書店や問屋が認証マークのない本を扱いたがらず、実質的な力を持ったが、2001年にマーベルが、2011年にDCとアーチーが離れて役目を終えた。規則の条数は資料により食い違う。

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登録日時
2026年11月6日 19:48
出典を確かめた日
2026年11月6日
分野
世界のマンガ
立場
事実・データ
タグ
海外とのつながり新着漫画雑誌新着
作品・人物
Comics Code Authority、Fredric Wertham、William Gaines、EC Comics、Marvel、DC Comics
資料の種類
事典・概説
年代
1954年、1950年代

本文と出典

あらまし

コミック規定(Comics Code)は、アメリカのコミックブックの出版社が1954年に作った自主規制である。運営したのは出版社の団体、コミックス・マガジン協会(CMAA)で、審査を通った本には認証マークが付いた。法律ではないので、守らなくても罰せられるわけではない。それでも、マークのない本を店が置きたがらなかったため、事実上は守らざるをえない決まりになっていた。
この規定は日本の漫画とは直接の関係がない。ただ、漫画への風当たりが強かった同じ1950年代に、日本の業界が選んだ道と比べると違いが見える。そこまでを、確かめられた範囲で書く。

主なできごと

・1954年4月・6月 上院の小委員会がニューヨークで、コミックと少年非行をめぐる公聴会を開く(4月21日、22日、6月4日)
・1954年 精神科医フレドリック・ワーサムが『無垢の誘惑』を出版する
・1954年9月 CMAAが発足し、判事のチャールズ・マーフィーを責任者に迎える
・1971年 規定が改訂される。麻薬を扱う話などを認める方向に動く
・1989年 規定が再び改訂される
・2001年 マーベルが審査への提出をやめ、独自の表示制度を作る
・2010年 ボンゴ・コミックスが規定の使用をやめる
・2011年1月 DCが1月20日に離脱を発表し、翌21日にアーチーが続いたとされる
・2011年9月29日 認証マークの権利が、表現の自由を守る非営利団体CBLDFに移る

くわしく 作られた事情

1954年の春、上院の小委員会がニューヨークで公聴会を開いた。ウィキペディア(英語)の小委員会の項によれば、日付は4月21日、22日、6月4日である。出版社EC社のウィリアム・ゲインズが証言し、議員から質問を受けた。この項は、公聴会を受けて出版業界が規定を採用し、いくつかの出版社が刊行計画を変えたり、作品を打ち切ったりしたと述べる。公聴会がコミックを非行の原因と結論づけたかどうかは、開いたページには書かれていなかった。
同じ年、ワーサムの『無垢の誘惑』が出た。ブック・ライオットの解説は、この本が、非行少年がコミックを読んでいたことを主な根拠に、コミックが非行を助長すると訴えたものだと説明する。同じ解説は、キャロル・ティリーの研究が、ワーサムは調べた内容の多くを誇張し、でっち上げたと論じたとも伝える。ティリーの論文そのものは開いて確かめていないので、この点は解説の紹介にとどめる。
規定の運営を担ったCMAAについて、ウィキペディア(英語)は、1954年9月に発足し、少年非行に詳しいニューヨークの治安判事チャールズ・F・マーフィーを責任者にしたと書く。規定は1948年に別の出版社団体が作った規約を土台にしており、その規約はさらに、1940年代のハリウッドの映画製作規則を手本にしたとされる。政府の規制を避けるために業界が自分で線を引くという仕組みは、映画の先例をなぞったものだ。

くわしく 規定の中身

規則の数は資料によって違う。ウィキペディア(英語)は19項目の規則を挙げ、ブック・ライオットの解説は41の条項があったと書く。数え方の違いか、版の違いかは確かめられなかった。内容で共通して確かめられるのは次の点である。
・犯罪を好意的に描かない。犯人を英雄のように扱わない
・過度の暴力や残酷な表現、恐怖の表現を避ける
・題名に「ホラー」「テラー」の語を使わない
・警察官、裁判官、政府の役人を軽んじて描かない
・善が最後に勝ち、犯人は罰を受ける
・ゾンビ、吸血鬼、グール、狼男を扱わない
・下品な言葉、わいせつな表現、裸、強姦や性的な逸脱を載せない
ウィキペディアの項は、書店や問屋の多くがマークのない本を扱わなかったため、自発的な制度でも力を持ったと述べる。デルやゴールド・キーなどは、ディズニーなどの権利元が内容を決める事情もあり、マークを付けていなかった。

くわしく ヒーローものと恐怖もの

最も打撃を受けたのは、恐怖ものを売りにしたEC社だった。ウィキペディアは、ゲインズが「犯罪」「ホラー」「テラー」を禁じる規則を、自社のよく売れる題名を狙ったものと受け止め、のちにコミックの刊行をやめて雑誌『マッド』に専念したと伝える。1956年には、宇宙飛行士を黒人として描いた最後のコマの修正をマーフィーが求め、ゲインズが報道に訴えると迫って撤回させた出来事も記されている。
ヒーローものへの影響については、開いた資料が詳しく述べていない。確かめられるのは、善が勝ち、権力者への敬意を保つという規則が、ヒーローと悪役の筋書きに合っていたことくらいである。1971年には、マーベルが薬物の問題を扱うスパイダーマンの号を出したいと申し出たことが規定の見直しにつながったと、ブック・ライオットの解説は書く(ウィキペディアは同じ年の別のDC作品も挙げている)。この改訂で、犯罪者の描写や吸血鬼などの扱いが、条件つきで緩んだ。

なぜ廃れたのか

1970年代から80年代にかけて、出版社の売り先は、専門のコミック店へ移っていった。ブック・ライオットの解説によれば、この店はマークを求めなかった。1989年にDCがマークをやめたがったとも書かれているが、実際に離れたのは後である。
2001年、マーベルは、審査機関が『X-Force』の号に修正を求めたことをきっかけに、提出をやめて独自の表示制度を作った(ウィキペディア)。2010年にボンゴが離れ、2011年1月20日にDCが、E、T、T+、Mの4段階の自社表示への切り替えを発表した(ICv2の記事)。ICv2の記事の時点では、アーチーが唯一残った出版社で、ウィキペディアはその翌日にアーチーも離れて規定が事実上なくなったと記す。9月29日には、解散したCMAAがマークの権利をCBLDFへ移した。

日本の規制との比較

日本では、1950年代半ばに、赤本漫画への批判が強まった。個人のまとめサイト(ウィキペディアの記述に拠るとされる)は、1954年ごろから殺人や暴力を含む漫画へ、子どもを守る会やPTAが非難を始めたと整理する。裏取りができていない整理なので、年の特定は控える。
日本の業界団体が自主規制へ動いたのは、その少し後だ。同じまとめサイトによれば、1963年に出版倫理協議会ができ、1965年には有害図書に指定された雑誌を、特別な注文がない限り小売店へ配本しない取り決めを始めた。1991年には成年コミックマークが付いた本が出て、1996年には出倫協が成年向け雑誌マークの表示を始めた。
悪書追放運動の象徴とされる白ポストは、1963年に兵庫県尼崎市に置かれたとされる。大尾侑子の論文の要旨によれば、運動は母親団体や警察、政府が担い、対象は成人向けの娯楽誌やポルノ雑誌だった。つまり、日本の運動は漫画だけを狙ったものではない。

評価の分かれる点

規定が文化を縛ったのか、露骨な表現から子どもを守ったのかは、見方が分かれる。ゲインズのように自社の作品を狙い撃ちされたと受け止めた人がいる一方、政府の規制を避けられた点を評価する見方もありうる。後者は、開いた資料から読み取れる範囲の話ではない。
また、ワーサムの扱いも一致しない。ティリーの研究の紹介では、根拠に重大な問題があったとされる。ただし、その研究をくらさんが原文で確かめたわけではない。

くらさんの考察

アメリカの規定は、法律が作られる前に、業界が自分で線を引いた制度だった。日本の自主規制は、条例による有害図書の指定が先にあり、それを避けるために業界が配本の取り決めを作ったという順序に見える(これは、まとめサイトの年表に基づく読みなので断定はできない)。両者の違いは、規制する主体が業界の内側か外側かにあると考えられる。

ジージへの問いかけ

・子どものころ、親や学校から漫画を読むなと言われた経験はありましたか。
・出版社が自分で内容に線を引くやり方と、役所が決めるやり方では、読者にとって何が違うと思いますか。
・戦後の貸本や赤本の時代、漫画への風当たりはどんな空気でしたか。

出典

・ウィキペディア(英語)「Comics Code Authority」 https://en.wikipedia.org/wiki/Comics_Code_Authority
・ウィキペディア(英語)「Senate Subcommittee on Juvenile Delinquency」 https://en.wikipedia.org/wiki/Senate_Subcommittee_on_Juvenile_Delinquency
・Book Riot「A Look Into the History of the Comics Code Authority」 https://bookriot.com/comics-code-authority-history/
・ICv2の記事(2011年1月20日付) https://icv2.com/print/article/19209
・Comic Book Legal Defense Fund「The Comics Code」 https://cbldf.org/the-comics-code/
・出版の自主規制(個人のまとめサイト) https://scrapbox.io/motoso/%E5%87%BA%E7%89%88%E3%81%AE%E8%87%AA%E4%B8%BB%E8%A6%8F%E5%88%B6
・大尾侑子「「白ポスト」はいかに“使われた”か?」(マス・コミュニケーション研究100号・2022年・要旨のみ) https://www.jstage.jst.go.jp/article/mscom/100/0/100_143/_article/-char/ja

この記事を読んで浮かんだ疑問は、運営者ジージがよろず研究室でくらさんに質問し、答えをそこに載せていきます。