ver0.90

← 漫画賞とイベント一覧へ戻る

No.216 アイズナー賞と日本マンガ 米国のコミックス賞に「アジア作品」の枠ができるまで

アイズナー賞は米国のコミックスの賞で、1988年に始まり、1991年からサンディエゴのコミコンで授賞式が開かれている。日本の漫画は「米国版の国際作品」を選ぶ部門で長く受賞してきた。公式サイトは開けず、報道と事典で確かめた範囲で、2026年の結果までをまとめる。

𝕏 でポストする

登録日時
2026年11月5日 19:45
出典を確かめた日
2026年11月5日
分野
漫画賞とイベント
立場
事実・データ
タグ
漫画賞新着海外とのつながり新着
作品・人物
ウィル・アイズナー、アイズナー賞、手塚治虫、浦沢直樹、松本大洋、伊藤潤二
資料の種類
報道・統計
年代
1988年、2020年代

本文と出典

あらまし

アイズナー賞(ウィル・アイズナー・コミック業界賞)は、米国のコミックス(漫画)に贈られる賞である。名前は、米国の漫画家で作家のウィル・アイズナーにちなむ。日本の漫画は、米国で出た英語版を対象にする「米国版の国際作品」の部門で、何度も受賞している。
この記事は、英語版ウィキペディア、アニメ・ニュース・ネットワーク(ANN)、韓国の新聞など、開けた資料で確かめた範囲で書く。主催側のコミコン公式サイトは、調べた時点で該当ページを開けなかった。そのため、賞の成り立ちと過去の年の一覧はウィキペディアに頼っている。

主なできごと

・1988年 アイズナー賞の第1回の授賞(1987年に出た作品が対象)
・1991年 以後、授賞式はサンディエゴ・コミコンで開かれている
・1998〜2006年 アジアの作品は「米国版の外国作品」部門で競った(ウィキペディアによる)
・2007年 外国作品の部門が分かれ、日本向けの部門ができた(同上)
・2009年 手塚治虫『どろろ』(バーティカル社)が「国際作品・日本」部門で受賞(ANN)
・2010年 部門名が「国際作品・アジア」に(ウィキペディアによる)
・2011年 浦沢直樹『20世紀少年』が受賞(ANN)
・2013年 『20世紀少年』が2度目の受賞(ANN)
・2025年 松本大洋『Tokyo These Days』(英語版の題)が受賞(ANN)
・2026年 韓国のサンホ『Purgatory Funeral Cakes』(英語版の題)が受賞(韓国の新聞など)

くわしく 賞の成り立ち

英語版ウィキペディアによると、アイズナー賞は1987年に廃止されたカービー賞の後を受け、ハーベイ賞と並んで作られた。第1回は1988年で、対象は1987年に出た作品である。運営はジャッキー・エストラーダが担っているとされる。授賞式はコミコンで1991年から毎年開かれる。
選び方は二段になっている。5〜6人の審査員団が各部門の候補を挙げ、漫画業界の関係者が投票で受賞作を決める。審査員には、漫画店の店主、図書館員(2005年から)、研究者などが入ることが多いという。名前の由来のアイズナーは、2005年に亡くなるまで授賞式にたびたび出席した、とこの資料は書く。
この段落の内容は、ほかの資料で裏取りできていない。

くわしく アジア作品の部門ができた経緯

英語版ウィキペディアの部門ページは、次のように伝える。アジアの作品は、1998年から2006年まで「米国版の外国作品」部門で競い、2003年と2006年を除く毎年、受賞した。2007年にこの部門が「米国版の国際作品」と「米国版の国際作品・日本」に分かれ、2010年に日本の部門が「国際作品・アジア」と改名された。
資料の間には食い違いがある。アイズナー賞の本体のページは、日本の部門を2009年に廃止し、2010年にアジアの部門を新設したと書く。部門ページは「改名」と書く。どちらの書き方が正確かは、公式の記録を開けていないので確かめられなかった。また、部門ページの表は2007年を最初の受賞年としているが、同じページの沿革は1998年を起点とする。表の2007年は、分かれたあとの部門の数え方と読める。
ANNの2009年の記事は、『どろろ』の受賞を、この部門で「3人目の受賞者」と伝える。「日本」の名がついた部門が2007年にできたとする説明と、数の上では合う。
対象は、アジアで最初に出版され、米国で再刊された漫画である。日本、韓国、中国、シンガポールの作家の作品が候補になっているとされる。つまり、日本の漫画だけの賞ではなく、日本の漫画は、その中で多くの受賞をしている、という位置づけになる。

くわしく 日本の受賞例

英語版ウィキペディアの受賞作一覧では、2007年以降の受賞作の大半が日本の作品である。ANNで受賞を確かめられた年は次のとおり。
・2009年 手塚治虫『どろろ』(バーティカル社)。
・2011年 浦沢直樹『20世紀少年』。候補は、手塚治虫『Ayako』、Yumi Unita『Bunny Drop』、萩尾望都『A Drunken Dream and Other Stories』、Natsume Ono『House of Five Leaves』(題はANNの英語表記)。
・2013年 『20世紀少年』が再び受賞。候補は、手塚治虫『Barbara』、水木しげる『NonNonBâ』、ヤマザキマリ『Thermae Romae』、Li KunwuとP. Ôtié『A Chinese Life』(題は英語表記)。
・2025年 松本大洋『Tokyo These Days』(翻訳マイケル・アリアス)。候補は『Ashita no Joe: Fighting for Tomorrow』、『Hereditary Triangle』、『Kagurabachi』、『Last Quarter』、『Search and Destroy』(Atsushi Kaneko作、手塚治虫『どろろ』をもとにした作品)。題は英語表記。
ウィキペディアの一覧には、このほかに水木しげる『Showa: A History of Japan』、田亀源五郎『My Brother's Husband』、東村アキコ『Tokyo Tarareba Girls』、伊藤潤二『Remina』『Lovesickness』、宮崎駿『Shuna's Journey』、藤原マキ『My Picture Diary』なども載る。これらの年は、ANNなどでは照合していない。
2011年と2013年がともに『20世紀少年』という点は、一覧の表記が怪しく見える。そこで個別に調べたところ、ANNの両年の記事で確かめられた。

くわしく 最新の結果

2026年は、7月24日(米国時間)にサンディエゴで第38回の授賞式が開かれた。韓国のコリア・タイムズによれば、アジア部門の受賞作はサンホ『煉獄の葬餅屋』で、韓国の出版社の発表として伝えられた。日本以外の作品の受賞は、確かめた資料の範囲では多くない。過去の年の出身国の内訳までは確かめられなかった。
このほか、2026年のアイズナー賞には、日本の漫画に関わる受賞があった。anitrendzの記事によれば、短編の部でShintaro Kagoの「Blood Harvest」が受賞し、大友克洋『AKIRA』全5巻の米国版ハードカバー集が復刻資料の部で受賞した。研究書ではAndrea Horbinski『Manga's First Century』(カリフォルニア大学出版局)が学術書の部で受賞した。殿堂入りには鳥山明と永井豪が名を連ねた(anitrendz)。2026年のこれらの結果は、file770の一覧にも同じ内容が載っている。
確認できた範囲では2026年までで、2027年の発表は調べた時点で見つけていない。

なぜ今も語られるのか

受賞が日本のニュースになるのは、米国の漫画関係者が選ぶ賞で、翻訳された日本の漫画が評価される場だからである。一方、受賞対象は、米国で英語版が出た作品に限られる。日本での評価の高さと受賞の有無は、直接には結びつかない。英語版が出ていなければ、そもそも候補にならない。

評価の分かれる点

部門名の変遷(改名か、廃止と新設か)、部門の始まり(1998年か2007年か)は、上に書いたとおり、資料によって書き方が違う。どちらが正しいかは断定しない。

くらさんの考察

2025年までの受賞作は、手塚治虫の過去の作品、水木しげるの戦争と昭和の記録、松本大洋の新しい作品など、年代の幅が広い。米国での翻訳出版は、新作だけでなく古い名作を掘り起こす形でも進んでいる、と考えられる。2026年にアジア部門を韓国の作品が取ったことは、日本の漫画が長く強かったこの部門の、これまでとは違う動きとも読める。ただし、1年だけの結果で傾向を言うことはできない。

ジージへの問いかけ

・手塚治虫の『どろろ』が、米国で半世紀以上あとに賞を取ったことを、どう思いますか。
・子どものころに読んだ漫画で、英語に訳されて賞を取ってほしい作品は何でしょうか。
・日本の漫画賞と、米国の漫画賞は、選ぶ人の顔ぶれがどう違うと思いますか。

出典

・Eisner Awards(英語版ウィキペディア) https://en.wikipedia.org/wiki/Eisner_Awards
・Eisner Award for Best U.S. Edition of International Material—Asia(同) https://en.wikipedia.org/wiki/Eisner_Award_for_Best_U.S._Edition_of_International_Material%E2%80%94Asia
・Osamu Tezuka's Dororo Manga Wins Eisner Award(ANN・2009年) https://www.animenewsnetwork.com/news/2009-07-25/osamu-tezuka-dororo-manga-wins-eisner-award
・Urasawa's 20th Century Boys Manga Wins Eisner Award(ANN・2011年) https://animenewsnetwork.com/news/2011-07-23/urasawa-20th-century-boys-manga-wins-eisner-award
・Urasawa's 20th Century Boys Wins 2nd Eisner Award(ANN・2013年) https://www.animenewsnetwork.com/news/2013-07-20/urasawa-20th-century-boys-wins-2nd-eisner-award
・Taiyo Matsumoto's Tokyo These Days, Yuna Hirasawa's My Journey to Her Win Eisner Awards(ANN・2025年) https://www.animenewsnetwork.com/news/2025-07-26/taiyo-matsumoto-tokyo-these-days-yuna-hirasawa-my-journey-to-her-manga-win-eisner-awards/.227041
・Korean graphic novel wins Eisner Award for first time(コリア・タイムズ・2026年) https://koreatimes.co.kr/lifestyle/books/20260801/korean-graphic-novel-wins-eisner-award-for-1st-time
・Sanho's Purgatory Funeral Cakes Manhwa, Shintaro Kago's 'Blood Harvest' Short Manga Receive 2026 Eisner Awards(anitrendz) https://www.anitrendz.com/news/2026/07/25/sanhos-purgatory-funeral-cakes-manhwa-shintaro-kagos-blood-harvest-short-manga-receive-2026-eisner-awards
・2026 Eisner Awards(file770) https://file770.com/2026-eisner-awards/

この記事を読んで浮かんだ疑問は、運営者ジージがよろず研究室でくらさんに質問し、答えをそこに載せていきます。