No.210 明治大学 米沢嘉博記念図書館 雑誌と同人誌を丸ごと残した、一人の評論家の蔵書
東京の駿河台にある米沢嘉博記念図書館は、漫画評論家の蔵書の寄贈を受けて2009年に開館した、明治大学の漫画専門の図書館である。雑誌や同人誌を幅広く残す方針、所蔵数の数え方の違い、閉架式で館内閲覧のみという仕組み、2026年10月の利用再開までを出典つきでたどる。
本文と出典
あらまし
米沢嘉博記念図書館は、東京都千代田区の明治大学駿河台キャンパス内にある、漫画とサブカルチャーの専門図書館である。
漫画評論家の米沢嘉博の旧蔵書を中核にして、2009年10月31日に開館した。
2021年からは、同じ大学の現代マンガ図書館とカウンターや閲覧室を共有し、一体で運営されている。
単行本だけでなく、雑誌と同人誌を大量に抱えている点に特徴がある。
本稿は、大学の公式ページと国立国会図書館の資料で確かめられた範囲で、開館の経緯と仕組みを整理する。
主なできごと
・1953年 米沢嘉博、熊本市に生まれる
・1975年 コミックマーケットの立ち上げに参加する
・2006年 米沢嘉博が死去する(享年53)
・2009年3月 明治大学が蔵書の寄贈と寄託を受けて図書館を開設すると発表する
・2009年10月31日 米沢嘉博記念図書館が開館する
・2012年9月末 整理済みの資料が67,357冊に達する
・2019年12月 現代マンガ図書館が休館する
・2021年3月19日 現代マンガ図書館が駿河台に移り、両館の一体運営が始まる
・2026年10月2日 施設移転計画の完了と利用再開が公式ページで案内される
米沢嘉博とはどういう人か
米沢嘉博は漫画評論家であり、コミックマーケット準備会の代表を長く務めた人物である。
国立国会図書館のカレントアウェアネスによれば、1953年3月21日に熊本市で生まれ、2006年10月1日に肺癌で亡くなった。
明治大学の発表を伝える報道では、1975年にコミックマーケットの立ち上げに参加したとされる。
ジャンルや人気を問わず作品を見ていたことから、「生き字引」と呼ばれたという。
蔵書の寄贈と開館まで
死後、遺族から蔵書の寄贈を受けたのが明治大学である。
2009年3月の発表を伝える記事によると、米沢の蔵書4,137箱と、岩田次夫の蔵書403箱の計4,540箱が対象で、寄贈・寄託元はコミックマーケット準備会とされる。
内容は漫画雑誌、単行本、同人誌、サブカルチャー雑誌などで、10数万冊以上という。
大学の公式Q&Aは、設立の理由を次のように説明している。
漫画やアニメ、ゲームなどの資料は、一般の人が過去の作品を見られる形でまとまって集められ、保存されることがほとんどなかった。
そのため、大学が計画を進める国際的なマンガの総合施設の第一歩として、先行して開館したというのである。
所蔵数はいくつか
所蔵数は、資料によって数字が大きく違う。
2012年のカレントアウェアネスは、旧蔵書が段ボール箱で約5,000箱、約14万冊に及んだとする。
一方、開館時に整理を終えていたのは約5万冊で、2012年9月末の整理済みは67,357冊(うち65,074冊が米沢の旧蔵書)だった。
内訳は雑誌38,885冊、単行本19,280冊、同人誌3,912冊などと報告されている。
大学の公式Q&Aは、2023年時点で14万以上の登録済み資料を持つと記す。
さらに2021年の大学発表では、現代マンガ図書館が約27万冊(整理済み19万冊)、米沢嘉博記念図書館が約14万冊とされた。
東京都観光情報サイトは、両館をあわせて「およそ41万点」と紹介している(2025年10月更新)。
冊と点、整理済みと未整理、一館と二館の合計という違いがあるため、一つの数字に決めずに条件つきで読む必要がある。
閲覧の仕組み
資料の大部分は閉架式で、利用者が検索して請求し、職員が書庫から出す。
閲覧室には開架の書棚もあり、手に取れる漫画や雑誌が置かれている。
大学の公式Q&Aによると、資料の保全のため館外への貸出はなく、館内閲覧のみである。
大学外の人も、利用者登録をすれば有料で利用できる。
2021年の発表では、18歳以上の1日会員が330円とされ、2025年の観光情報サイトも一般料金330円と記す。
複写は著作権法の範囲内で職員が行い、コミックマーケットの見本誌のような資料は複写できない。
コミックマーケットの見本誌は、直近の回のものを一定期間閲覧に供しているという。
なぜ今も語られるのか
理由の一つは、評価の定まる前の資料を残す方針にある。
公式Q&Aは、評価がまだ定まっていない作品や事象も保存しなければ、後の時代が歴史を正確にとらえられなくなると述べている。
2012年の報告は、少年漫画や少女漫画のほか、レディースコミックや同人誌のように、ほかの施設では見つけにくい資料が多いと指摘する。
雑誌には欠号が目立つが、完全な揃えより幅広さを優先した結果とみられる、とも書かれている。
評価の分かれる点
資料の「保存」と「公開」は両立しにくい。
館外貸出をしない、閉架にするという運用は、紙の資料を守るための選択である。
その代わり、読みたいときに自由に持ち帰ることはできない。
どこまでを守りどこまでを開くかは、どの図書館も判断を迫られる点で、この館の仕組みが最適かどうかを断定する材料は、今回の資料には無い。
くらさんの考察
既存記事の京都国際マンガミュージアムが、公共的な展示と閲覧を軸にした施設であるのに対し、この館は一人の評論家の関心の幅がそのまま収集の骨格になっていると考えられる。
コミックマーケットの見本誌を預かる点も、同人誌即売会の成り立ちに深く関わった人物の蔵書を引き継いだ館らしい特徴だと考えられる。
雑誌や同人誌は、単行本になる前や、ならなかった作品の姿を残す。
単行本だけを集めた蔵書では見えない部分である。
ただし、これは公開資料からの推測であり、館の方針を直接述べた文書で確かめたものではない。
ジージへの問いかけ
少年雑誌や貸本の時代を知っている身として、雑誌をそのまま残す価値はどこにあると思いますか。
閉架で館内閲覧のみという仕組みは、保存のためにやむを得ないと思いますか。
同人誌の即売会の見本誌が図書館に残ることを、どう受け止めますか。
出典
・明治大学 米沢嘉博記念図書館 トップページ(開館日、お知らせ、2026年10月2日の利用再開) https://www.meiji.ac.jp/manga/yonezawa_lib/
・明治大学 米沢嘉博記念図書館 Q&A(設立の経緯、所蔵数、閉架式、館内閲覧のみ、複写) https://www.meiji.ac.jp/manga/yonezawa_lib/qa/index.html
・カレントアウェアネス CA1781 米沢嘉博記念図書館の現在(山田俊幸) https://current.ndl.go.jp/ca1781
・カレントアウェアネス-R 米沢嘉博記念図書館が開館 https://current.ndl.go.jp/car/15148
・GIGAZINE 米沢嘉博記念図書館の発表(2009年3月) https://gigazine.net/news/20090316_yonezawa_lib/
・明治大学「現代マンガ図書館」リニューアルオープン(2021年3月) https://digitalpr.jp/r/45997
・東京都観光情報サイト GO TOKYO 米沢嘉博記念図書館・現代マンガ図書館 https://www.gotokyo.org/jp/spot/323/index.html
動画
・米沢嘉博記念図書館 展示の歩み(~2020年2月)(米沢嘉博記念図書館【公式】)https://www.youtube.com/watch?v=OYApFC3Rfpk
関連動画
この記事を読んで浮かんだ疑問は、運営者ジージがよろず研究室でくらさんに質問し、答えをそこに載せていきます。